
南半球を訪れる オーストラリア・ウッドフォードフォークフェスティバル――歓喜の3作品『編織天幕』『浮雲』『樹屋夢』
- 王 文志|國際藝術團隊

- 2025年4月8日
- 読了時間: 7分
オーストラリア最大規模の芸術と音楽の祭典――ウッドフォードフォークフェスティバルは、毎年年末に開催され、期間中は10万人を超える人で賑わう。音楽やダンス、文化、手作りアート、パフォーマンスが6昼夜にわたりイベントを盛り上げ、新たな一年(元旦)をみんなで迎える。
このフェスティバルはすでに30年以上の長い歴史を持ち、開催会場もとてもユニークである。毎年イベントが行われる土地は元々荒れた牧場で、人々の長年にわたる努力と細やかな手入れによって、12万本を超える亜熱帯雨林の木々や蘭、シダ植物を植えたことで徐々に再生し、美しく自然豊かな場所に変わったのだ。
年の半ば辺りには毎年植林活動が行われ、参加者を募って植林のほか様々な植物の手入れを実施し、園内の環境保護の方法やコンセプトの設計も考案している。
この土地は、蝶や野生動物のための自然生息地で、毎年年末に芸術家や音楽家、そして自然や芸術文化活動を愛する人々が集まって素晴らしい大地の祭典が開催される場所にもなっている。
2013『織りの天幕』(Woven Sky) — 観客をフェスティバルに迎え入れる

2013年に、王文志はウッドフォードフォークフェスティバルに初めて招待され参加した。この年、王は『編織天幕』(Woven Sky)を制作し、音楽メイン会場入口の歩道を設計し、長くて広い竹編みのトンネルで来訪者をフェスティバルの地へと迎え入れた。

それは、オーストラリアの多くの来訪者が初めて王文志の作品に触れたときであり、「竹」が生み出す美しい空間を初めて体感した瞬間でもあった。また、この縁をきっかけにその後の2014年、2016年も継続して『浮雲』(Woven Cloud)と『樹屋夢』(Quandong Dream)を出展した――3つの作品にはそれぞれ心温まる出会いのの記憶があり、王文志と蔡美文(制作チームのアートディレクター兼王文志の妻)がフェスティバルの接待人でオーストラリアの建築デザイナー・Nici氏と10年以上の付き合いと信頼関係を築く機会にもなった。
2014『浮雲』(Woven Cloud) — 特別な入口が人々の絆をつなぐ

2014年、2つ目の作品『浮雲』(Woven Cloud)が誕生した。
這一次,作品位於購票處入口的廣場,是所有觀眾排隊等候買票入場的地方。
今回、作品はチケット売り場の入口の広場に設置され、そこでは来訪者が列を成してチケットを購入し中に入っていった。曲線と層を描いた『浮雲』は、空に浮かぶ雲のように軽やかで柔らかく、めくり上げた仮面のような形もしながら笑顔で来訪者を迎える。
以前であれば、フェスティバルの来訪者は入場してからお互いを知り、一緒に音楽を聴いたり踊ったりテントを行き来するうちに親睦が築かれた。ところが『浮雲』の登場によって、そのリズムは変わったのだ。入口で列を作っていた人々は、日陰で休めるようになると、言葉をかわしながら時間を過ごし、情報交換を始め、中に入る前から知り合いができた。
さらに、オーストラリアのテレビ放送でフェスティバルが宣伝されると、入口の『浮雲』(Woven Cloud)の映像が登場し、オーストラリアの人々に目新しく壮観な印象を与えた。そこで、テレビで見た光景を実際に見ようとフェスティバルに訪れる人もいた。

王文志はこう話す。「来訪者が入口で並ぶ姿を見ていたのと、今年のフェスティバルのテーマが「仮面」であることを知って、Niciと話したらオーストラリアには台湾や日本のような特徴的な庭園や涼亭がないことに気づいたんです。そこで、オーストラリアならではの竹編みの涼亭と庭園をプレゼントしようと思いました。並んでいても涼みながら世間話ができるように。」

日差しが照りつけるオーストラリアの大地で、「竹」という言葉は特別な意味を持つようになった。竹にはしなやかで、開放的、包容力がある。西洋の国では、竹でこれほど大型の芸術作品が創造できるとは想像していなかったかもしれない。しかし、作品『浮雲』(Woven Cloud)はその固定概念を打ち破り、オーストラリアの自由でのびのびした雰囲気を取り入れ、かつ東洋の涼亭や庭園のイメージも組み合わせた。それは目に見えない形で両者の文化が静かに対話しているかのようだ。

その年のフェスティバルが開幕するとき、運営者は当日「文志の夜」という作業チームとボランティアの人々が一緒に作品の完成を祝う場を企画してくれた。ところが、王はそれに対してこう提案した。「せっかく『文志の夜』を開くなら、いっそのこと『台湾の夜』にしませんか?みんなでビールを飲んで台湾のパイナップルケーキを食べましょう!」
そこで、蔡美文はオーストラリア・ブリスベンにある台湾事務所と連絡を取り、その夜は台湾のパイナップルケーキと花生湯(ピーナッツスープ)、台湾ビールを届けてもらった。他にも、台湾の原住民衣装をまとったグループを見つけてきて「高山青」という歌を披露した。
予想外の出来事は、オーストラリアの建築デザイナー・Nici氏が事前にこっそりと大きなケーキを注文していたことである。そのケーキは作品『浮雲』とそっくりの形にオーダーメイドされていて、これにはみんなが大変喜び、深く印象に残った。
こうして宴の夜は、みんなで賑やかにビールを飲んでパイナップルケーキを味わい、台湾から送ってもらった花生湯の缶詰を堪能した。また、王文志のドキュメンタリー映画『山霊』(MOUNTAIN SPIRITS)も上映され、笑顔あふれる夜のひとときは、みんなの人生の中でも忘れられない思い出となったのだ。
2016『樹屋夢』(Quandong Dream) — 自然に抱かれる創作

時は経ち、気づけば2016年。王文志は再びオーストラリアのこの土地を訪れると、今回は作品『樹屋夢』(Quandong Dream)を作り上げた。この作品はオーストラリアに自生する高木「Quandong」(クアンドング)の上に創作されたもので、土地の再生への願いをのせて木の梢まで伸びた作品は、大地の夢のような境地を開き、人々を秘密の空間の中に包み込んでくれる。
竹と木が織り合う『樹屋夢』は、芸術美学の創造であり、一見すると自然に生まれた芸術作品のように見える。

多くの人がわざわざこの大樹に足を運び、天然の鳥の巣のような巨大な樹上の家を一目見ようと訪れてきた。巧みに樹の幹と枝葉の間に溶け込んでいて、人が地面から木の梢まで登って横になり遊ぶことができ、大樹を抱きかかえることもできる。それは大自然と人間が互いに支え合い、寄りかかり合いながら生きている関係を象徴している。
縁の続き――オーストラリアから、日本の小豆島に姿を現す
その後、世界的なパンデミックの影響で、数年にわたり王文志はオーストラリアでの創作活動を再開することができなかった。しかし、王と蔡美文はNici氏とその間も連絡を取り合っていた。
感動的だったのは2025年、王文志が第6回日本瀬戸内国際芸術祭に参加することになったときのことである。Nici氏が橋渡し役となり、オーストラリアから3名の作業仲間を推薦してくれて、オーストラリアから来日して作品制作を手伝ってくれたのだ。
LeslieとLauraは、かつてオーストラリアで『浮雲』と『樹屋夢』の作品を目にしたことがあり、二人とも王文志の作品に深く感銘を受けていた。彼女たちは長年ウッドフォードフォークフェスティバルの手伝いをしていた経験もあり、Nici氏が推薦して、日本での作品『抱擁の小豆島』の制作に参加することになったのだ。
もう一人のオーストラリアの仲間はTayaで、彼女が初めて王文志の作品を見たときは、まだ14歳だった。何度もフェスティバルを訪れ、『織りの天幕』の通り道を歩いたり、『浮雲』の中で友達と涼みながらお喋りしたり、『樹屋夢』に登って寝転んだりしたのを覚えていて、どの作品もわくわくしながら中に入った記憶があると言う。今では、Tayaは26歳になり、来訪者ではなく制作チームの一員になることを希望した。そして、今回の竹編み芸術の制作で次第に自分自身の事が分かるようになると、彼女は芸術の道を学ぼうと歩き始めた。
王文志の作品は毎回、王自身も想像しない縁をつなぎ出している。
一つの大型の竹編み芸術を通して、人々がそれぞれの思いを抱きながら次の作品や国で出会う……縁はまるで一本の細い糸のように世界中の人々の心をつなぎ、多くの人々が共に編み成す面影も残している。





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