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故郷・嘉義への贈り物――『四脚獣』『戯分茶』『月影潭心』『森林之歌』

  • 執筆者の写真: 王 文志|國際藝術團隊
    王 文志|國際藝術團隊
  • 2025年4月8日
  • 読了時間: 6分

 嘉義、この農業と森林で有名な都市は、王文志の故郷であり、彼の創作人生の最も重要な源でもある。


 30年余りにわたる芸術の旅路で、王はこの愛する土地との対話を続け、その想いは四つの作品『四脚獣』『戯分茶』『月影潭心』『森林之歌』に込められている。


 これらの作品は、単なる芸術の展示ではなく時代への応答でもある——作品には嘉義の歴史が記憶され、芸術家・王文志の「芸術創作」による嘉義の文化・産業・精神の継承でもあり、芸術が都市の一部となったものだ。



『四脚獣』 民主と帝王の交点


「四脚獣」2009、台湾嘉義・国立故宮博物院南部院区 正門前
「四脚獣」2009、台湾嘉義・国立故宮博物院南部院区 正門前

 国立故宮博物院の南部院区(以下、故宮南院)前にそびえ立つ巨大な金属彫刻、それが『四脚獣』だ。この作品は彫刻というだけでなく、「民主と帝王」の対話も表現している。


 作品のインスピレーションは中国の古代青銅器「司母戊鼎(こうぼぼてい)」と「毛公鼎(もうこうてい)」から来ている。


 「毛公鼎」は厚みのある半球形の大きな青銅器で、故宮博物院の有名な至宝である。皇権や貴族の印の象徴だったが、時代の変化につれ世の中の流れは民主へ移り、人々の願いと労働が社会への大きな貢献を持つようになった。


 そこで、王文志は古代の象徴を転換して、時代の変遷にのせることにした。王が創作した『四脚獣』はもはや帝王の鼎(かなえ)ではなく「民の鼎」である――『四脚獣』の四つ足は大地に根ざして敬意を表し、人々の力と日常の記憶を表現している。


 作品は鳥・牛・人・鼎の四つ足で立ち、農業都市・嘉義を象徴したもので、地にしっかりと根づいている。鼎の胴体部分は、地元の人々が寄付してくれた鍋や食器を溶接して作り、ひとつひとつの金属片には人々の生活の痕跡が刻まれている。


 『四脚獣』は歴史と現代を融合させることで伝統への敬意を示すと同時に、新時代の到来を表した作品である。




『戯分茶』 茶の香りに漂う時の流れ


「戯分茶」2015、台湾嘉義‧国立故宮博物院南部院区
「戯分茶」2015、台湾嘉義‧国立故宮博物院南部院区

 嘉義の高山茶は広く名が知られ、『戯分茶』はまさにこの土地の文化の縮図ともいえる作品だ。


 この作品は、故宮南院のテーマ・アジア文化にあわせて「茶団」から発想を得て制作したもので、金色の茶団の造型が広場の草地に展示されている。アジアの茶文化と嘉義の高山茶の発展に敬意を示す作品だ。


 嘉義・阿里山は台湾の有名な高山烏龍茶の産地で、毎年多くの茶農家や職人がこの地の虜になっている。


 さらに、茶葉をねじるように揉む「揉茶(じゅうねん)」と蒸した茶葉を圧縮して固める「茶団(団茶、だんちゃ)」は伝統的な製茶の重要工程であり、中華文化が長年継承してきた技術を代表するものだ。


 『戯分茶』は茶文化の素晴らしさを静かに語り、「金色」は黄金色のお茶と豊かな土地をイメージしている。


 この作品は世代を跨いで受け継がれてきた思いを私たちに呼び覚まし、人々が長い間手をかけて守り続け、継承してきた土地と文化の価値に気づかせてくれる。




『月が綺麗ですね』 湖面に映る銀色の詩


「月が綺麗ですね」2012、台湾嘉義・蘭潭風景区
「月が綺麗ですね」2012、台湾嘉義・蘭潭風景区

 蘭潭(らんたん)は月の影と人々の記憶を映し出す湖で、かつての姿は今とは全く異なる。


 作品『月が綺麗ですね』が誕生する前、この湖は嘉義の人々には陰鬱な場所であった。過去にここで命を絶つ人もいて、蘭潭は奇異的で近寄りがたい雰囲気に覆われていた。


 「昔は蘭潭に夜来る人なんてあまりいませんでした」と王文志は話す。「でも、作品が完成してからは嘉義の人々が散歩に訪れたり、プロポーズや結婚写真を撮る場所になったんです。」


「月が綺麗ですね」2012、台湾嘉義・蘭潭風景区
「月が綺麗ですね」2012、台湾嘉義・蘭潭風景区

 王は金属を竹編みのように組み合わせて歩道を作り、人々が歩きながら蘭潭の水面に揺れる光を一望できるようにした。作品の核となっているのは上に向かって伸びる円形の建造物で、通路の青く彩られた敷瓦が湖面のさざ波を表わす「潭心」を演出し、夜の水面に浮かぶ月の影を思わせる。


 現在では、夜になると銀色の光が湖面を照らし、『月が綺麗ですね』を訪れた人々は、かつての陰鬱な雰囲気ではなく、詩情と静寂に満ちた光と影の中に入りこむことができる。


「月が綺麗ですね」2012、台湾嘉義・蘭潭風景区
「月が綺麗ですね」2012、台湾嘉義・蘭潭風景区

 王文志がこの場所で創作することを決めたのは、芸術を通してこの土地が秘める力と雰囲気に変化をもたらし、蘭潭がより明るく本来の美しさを人々に見せられるよう願ったからである。


 『月が綺麗ですね』の誕生は、ここ蘭潭の夜に温かい光をもたらした。




『森の歌』 — 鉄道と木々の記憶


「森の歌」2012、台湾嘉義・阿里山森林村
「森の歌」2012、台湾嘉義・阿里山森林村

嘉義市の鉄道沿いに作品『森の歌』が静かに佇んでいる。


 この作品が制作された場所は、もともと産業廃棄物を置いていた空き地で、人が足を踏み入れることはほとんどなかった。しかし、作品が完成すると、午後にここへ立ち寄り散歩し、蒸気機関車が音を轟かせて走っていたこの緑地を見に訪れる人が出てくるようになった。さらには嘉義市主催の野外音楽会も催された。


 作品の材料は八掌渓(はっしょうけい)の石と阿里山の旧鉄道のレールと木材が使われ、嘉義がかつて林業で繁栄した記憶とともに歴史情緒に溢れた芸術の場となっている。


「森の歌」2012、台湾嘉義・阿里山森林村
「森の歌」2012、台湾嘉義・阿里山森林村

 『森の歌』に一歩足を踏み入れると、自分の足音がはっきりと聞こえ、外からは蒸気機関車が轟音を出しながら通り過ぎていく音が聞こえる。『森の歌』の中央の大木の根元で話をすると、その音は美しく共鳴し、まるで森林がそっとあなたに向かって返事をしているようだ。


 ある時は午後の陽光が作品の天井の隙間から差し込み、またある時はそよ風が優しく吹きぬけ、開放的で清々しい気持ちにさせてくれる。さらに機関車が音を立てて通り過ぎていく…このような環境に身を置くと、過去の林業の記憶と現代の生活が交錯し、私たちはあたかも独特の時空の中に入りこんだようだ。




芸術で嘉義のひとつひとつの「移り変わり」を記憶する


 これまで紹介した4作品は王文志が嘉義に送った長い手紙のようなもので、嘉義の都市のひとつひとつの移り変わりを記録にしたためているようだ。


 作品はそれぞれの時代を越えて、嘉義の産業・歴史・生活を映し出している。王文志は芸術の美しさを用いることで、街そのものがまるで自らの物語を語っているかのように表現し、とても美しく記憶を残している。


 故宮の文化を現代に翻訳し、茶産業の豊かなイメージを描き、蘭潭湖畔に明るさをもたらし、ひとつの空き地を再生させたこれまでの4作品には、すべて「変容」「移り変わり」「祝福」といった深い意味が含まれている。


 4つの作品の誕生はそれぞれの場を再構築し、人々と環境の関係を改めてつなげた。


 王文志の創作する芸術は、単に観賞されるものではなく、世界をより美しくする方法でもある。


「森の歌」2012、台湾嘉義・阿里山森林村
「森の歌」2012、台湾嘉義・阿里山森林村

 
 
 

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王文志(ワン・ウェンツィー)
|国際チーム

アーティストのワン・ウェンツィーは、制作チームを率いて世界を旅し、「竹」を創作の媒体とし、異文化と融合・共創し、世界各地で作品を開花させてきた。
山や森がもたらす鼓動と豊かな生命力を畏敬の念をもって真摯に受け止め、美しい作品を通じ、自然の神殿へと昇華させて行くのである。

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