
瀬戸内国際芸術祭 15年のアートの道のり——王文志の手がけてきた小豆島6つの聖殿
- 王 文志|國際藝術團隊

- 2025年4月7日
- 読了時間: 5分
2010年夏、小豆島は第一回目の瀬戸内国際芸術祭を迎えた。
棚田の向かいには、竹で編みこまれた建築物がある。王文志の制作チームが国際ボランティアの人たちと協力してゆっくりと完成させた『小豆島の家』(House of Shodoshima)だ。
このアートの殿堂には、2つの村の間のある出来事が刻まれており、友好の架け橋のきっかけとなった。
2010 年「小豆島の家」

2010年に王文志が初めて小豆島を訪れたとき、ある年配の男性が地元の村の農村歌舞伎について話をしてくれた。その際、王は中山村と肥土村の村人の間におかれた見えない距離に気づいた。一方の村人が現れると、もう一方の村人は黙って離れていくのだ。
とりわけ気にしたわけではないが、「もしみんなで作品を創作できたら、お互いの村人はもう少し近づくことができないだろうか」という気持ちが湧いた。
そこで、王は2つの村に声をかけて作品制作をスタートし、それぞれの村から2500本の竹を提供してもらうことにした。ゆっくりと、毎日精を出しては楽しい雰囲気の中で竹を少しずつ編んでいき、『小豆島の家』はこうして美しい棚田の中に現れた。王文志があえて2つの村の人に向けてデザインした「家」でもある。

完成すると、王文志は喜びながら台湾の高山茶とパイナップルケーキを準備し、制作に参加くれた村の人全員を招待して、円になって座りパーティを開いた。みんなでお茶を飲み、お喋りして一緒に作業した思い出を分かち合った。言葉が通じなくても、写真を見たり、遠くを指差したり、パイナップルケーキを分け合ったり、お茶を飲んで美味しいと親指を立てたり―この時間は「言葉を超えた友情の証」を感じる瞬間であり、一緒に作業し、ご飯を食べ、お祝いした時間をみんなが心から楽しんだ。
こうして、『小豆島の家』は次第に人々が出会い、交流する場となり、ゆっくりと人々の心の架け橋も築いていった。

そのようなことがあり、時間が経ち作品を撤去する必要が出てきたとき、村人は簡単に受け入れることができず、芸術祭の運営側が作品を撤去することに抗議した。それほど、この作品は彼らの日常の一部になっていたようだ。
この出来事を知った王文志は、一通の手紙を村人たちに送り、こう約束した。「これで終わりではありません。私たちの新しい始まりです。私は必ず戻ってきます。」
2013 年「小豆島の光」
2013年、王文志は再び小豆島を訪れた。友人たちと再会し、みんなで喜びを分かち合った。一方で今回、王は小豆島を観光客が一時的に訪れて足早に去っていく場所にしたくないと考えていた。

「作品を使って、泊まりたくなるような場所にできないだろうか?夜景を楽しむのはどうだろう?」と王は思った。
『小豆島の光』(Light of Shodoshima)はこうして夜に輝いた。王が竹で編んだ聖殿の中に明かりを取り入れ、さまざまな光の変化をデザインしたことで、観光客は夜の小豆島から離れがたくなった。

「地元の民宿のオーナーが『夜の灯りを見たいからって本当にわざわざ泊まりに来てくれるんです』と話してくれました。」
王文志は作品『小豆島の光』の話題になると、毎回嬉しさを隠しきれずにこの話をする。


こうして、2010年から3年ごとに王文志は小豆島に戻り、瀬戸内国際芸術祭で新しい作品を世界の人々に魅せている。
2016 年「オリーブの夢」

2019 年「小豆島の恋」

2022 年「ゼロ」

十数年間、毎回王は同じ材質を使い同じ場所で異なる物語を編んできた。ひとつひとつの作品は、その年の王文志がこの土地に贈る祝福である。
このような創作を繰り返すことで、芸術と土地、芸術家と住民、期待と記憶、創作と感情といったお互いの結びつきはさらに深まっていった。
2025年には15年目を迎える。
「小豆島と島の人々は、私に多くの感動と記憶をくれます」王文志は手紙の中で以前こう書いている。「もしまた一緒に作品が作れるなら、その機会を大切にして永遠の『小豆島の家』を創造し続けたいと思います。」

作品はいつか撤去されるかもしれない。材料も老朽化するだろう。しかし、互いを想ったり、静かに送り合う祝福の気持ちはこの土地にずっと流れ続けるだろう。竹建築による心の聖殿は、時間とともにこの地を訪れる人に唯一無二の時間をもたらし、人々が集い、思い出を刻み、美しい記憶を残す場所となっている。
これまでの作品は、「家」→「光」→「夢」→「恋」→「心」→「抱擁」という名前で15年間つながり、生命の流れのように作品のひとつひとつがこの土地に記憶を残してきた。
2025年、『抱擁・小豆島』が誕生する。王文志が小豆島を再び抱擁する想いが込められており、小豆島が地球を抱擁する気持ちも表した作品だ。15年間という歳月は、まるで温かい光のようで、これからも静かにひとりひとりの心の中に輝き続ける。
竹でつながる縁を、王文志はこれからもつないでいく。





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