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高僧が作品の中央へ――タイランド・ビエンナーレ:作品『方外之境』の創作より

  • 執筆者の写真: 王 文志|國際藝術團隊
    王 文志|國際藝術團隊
  • 2025年4月7日
  • 読了時間: 5分

「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」
「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」

 2023年末、王文志は初めて東南アジアで創作活動を行い、タイ・チェンライで開催された第3回「タイランド・ビエンナーレ」に参加した。


 今回は、21カ国から60組のアーティストが一同に会し、この芸術祭に活気と魂を吹き込んだ。展示会場はチェンライと国境にあたる黄金の三角地帯(ゴールデン・トライアングル)に設けられた。周囲には広大な田園が広がり、空は飛行機が行き来しており、また有名な黒い家(バーンダム博物館)と白い寺(ワット・ロンクン)が濃厚な芸術文化の雰囲気を醸し出していた。


 そして、宗教・政治・芸術が交錯するこのような地域で、王文志の竹編作品『方外之境』(Beyond the Site)は誕生した。




異国の地で感じた温かな善意


これまでの日本やヨーロッパでの作業と異なり、今回タイのキュレーターからは、現地の人々に作業機会を与えたいとの希望で、王文志に作業メンバーの帯同を少なくしてほしいとのリクエストがあった。


 そこで、王と蔡美文は5人のスタッフだけでチェンライを訪れ、開催側が手配した現地スタッフと芸術祭の大型芸術作品の制作に取りかかった。互いに面識がなかったうえ、言葉も通じなかったため、意思疎通の大部分は簡単な指示で中国語、ミャンマー語、台湾語…或いは、翻訳アプリを駆使して行い、片言のコミュニケーションで力を合わせた作業が進められた。


 タイは灼熱の暑さだったが、現地の作業スタッフは体力があり、善良で素朴な人たちでもあった。互いに助け合いながら竹を運び、ひとつひとつジェスチャーや単語で意思疎通して肩を並べて汗を流していると、次第に阿吽の呼吸がとれるようになり、台湾とチェンライの現地スタッフの合同作業はとてもはかどった。


「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」
「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」



『方外之境』(Beyond the Site) チェンライの芸術精神への敬意


作品『方外之境』はチェンライ国際美術館の前に設置され、その姿は地元の寺院の尖塔の形に刺激を受け、象徴的なタイの衣装や宗教を融合したダイナミックな空間構造となった。


「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」
「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」

「私は、この作品に『道へ入る』感覚を持たせたかったんです。中に入ると心の奥へ通じ、さらに天国につながるような感覚です。」と王文志は語る。


 4つの柱は、黒と白が交互に並び、チェンライで最も代表的な建築物である黒い家(バーンダム博物館)と白い寺(ワット・ロンクン)を象徴している。


 白い寺は「寺院」と呼ばれているが、実際に僧侶がいるわけではない。タイの近代美術家・チャムルチャイ・コーシッピパット氏が作り上げた芸術エリアで、中に入ると天国と地獄、そして現実が交錯する特徴的な光景が広がっており、見に訪れる人々は毎日数万人にのぼる。


 また、黒い家は別の美術家が数十年にわたる年月をかけて建てたもので、こちらも奥が深く神秘的である。


 そして、この黒い家と白い寺が生み出す芸術的エネルギーの交錯が『方外之境』の重要なインスピレーションの源にもなっている。


 王文志は、作品『方外之境』の中央に大きな正方形の形をした突起物を設け、共用スペースにして座ったり、雑談したり、心を落ち着けたり、思索にふけることができるようにした。


 ある日のことだった。僧侶一行が作品の中央に入ってきて正方形の空間に黙って座ったかと思うと、静かに瞑想しながらお経を唱え始めた。これには王文志も強烈な印象を受け、芸術家として掛け替えのない感動を覚えた。




タイの芸術家たちの異なる精神性


制作期間中、王文志の妻でありアートディレクターでもある蔡美文はタイと台湾を5往復したのだが、その間、都市を観察していて心に響くものを感じた。


 美術家・チャムルチャイ・コーシッピパット氏が資金を投じて自ら建てた白い寺では、政府高官が開幕式に出席し、高僧に跪いて敬意を示す光景を目にし、蔡はタイの宗教と政治の融合具合が台湾と全く異なることを実感した。


 この都市は単なる観光地ではなく、「芸術」が凝縮されてできた場所。


 「ここの芸術家はみんなが力を惜しみなく出して都市を築いています。」と蔡は語る。「彼らが出資し尽力を尽くすのは、それが自分の展覧のためではなく、人生で重要なことだからです。自ら望んで街に貢献しているんです。」


 美術家・チャムルチャイ・コーシッピパット氏は白い寺で得る観光収入を地元の美術館やキュレーターの展覧企画にまわしていた。また、現地の芸術家と協会を組織し、活動施設を建設してきた。


 そして、キュレーターは世界各地の芸術家をタイランド・ビエンナーレに招いて作品を創作してもらい、また、現地政府は計画的に周辺都市を規格して各方面の人脈を活用して協力してもらうなど、それぞれが少しずつ力を出し合って懸命に発展計画を推し進めていた。



 ビエンナーレの開幕当日、タイは芸術版の水かけ祭りのような賑わいを見せた。人が詰めかけたのは広大で住宅も建っていない土地で、アスファルトの舗装すらされていない場所に観光バスが次々と停まると、来訪者は嬉しそうに音楽が最も鳴り響く入口に向かい、砂漠の中に突如現れた壮大な建築物の中へと入っていった。


 「タイの芸術祭の様式は、欧米や日本とは全く違いました。」と蔡は振り返る。


 人で溢れかえる中、国際美術館の前に展示された作品『方外之境』がみんなに取り囲まれた。


 周囲に高い建物がなかったため、太陽がちょうど作品の真上にくる正午時、外は焼けるような暑さになる。その瞬間、作品はまるで手を振りながら「さあ、さあ!中へ休みにおいで!」と話しかけているかのようだった。


「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」
「方外之境」2023、タイ・チェンライ国際美術館「第3回タイランド・ビエンナーレ」

 そう!中へ足を運んだ瞬間、身体は招かれたように涼しさと快適な感覚を覚えるのだ。作品の中にいると、外からの太陽は強烈な日差しではなく、ぽかぽかとした光となり地面一面に細かく降り注いでいた。


 今回の2023年タイ・ビエンナーレの参加にあたり、チェンライは大都市ではないが、地元の熱意ある芸術家と関係者によって支えられていることで、現代アートが根付き芽を出している、と王文志は感じた。


 そんな芸術を愛し、心を注ぐ人々と肩を並べて創作できたことは、王にとって非常に光栄なことであった。

 
 
 

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王文志(ワン・ウェンツィー)
|国際チーム

アーティストのワン・ウェンツィーは、制作チームを率いて世界を旅し、「竹」を創作の媒体とし、異文化と融合・共創し、世界各地で作品を開花させてきた。
山や森がもたらす鼓動と豊かな生命力を畏敬の念をもって真摯に受け止め、美しい作品を通じ、自然の神殿へと昇華させて行くのである。

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